現在主に使われている文様4

菊水文〈キクスイモン〉
菊の花に流水を配した文様で、中国の説話によれば、水辺の菊は神秘的な力を持つものとされ、不老長寿のめでたいしるしとして好まれました。流れ菊や菊の遣〈ヤ〉り水と呼ばれるものもあり、多数用いられています。橘正成の家紋としても有名です。

几帳文〈キチョウモン〉
平安時代の家具の1つで、室内に立てて内側を遮〈サエギ〉るために用いたものです。衝立式〈ツイタテシキ〉になった2本の柱に渡した横木に帳〈トバリ〉をかけ、帳には花鳥文・秋草文などの美しい文様が描かれています。振袖・留袖・訪問着・袋帯などに用いられています。

吉祥文〈キッショウモン〉
吉祥とは「よいきざし、めでたいしるし」の意味で、それを表現した文様を総称して吉祥文様といいます。本来は中国の信仰に基づいたものですが、日本に伝えられて以来、和様化し、有職文様として使われています。鶴・亀・鳳凰・竜など多数あります。

器物文〈キブツモン〉
筆・硯〈スズリ〉・文房具・御簾〈ミス〉・衝立〈ツイタテ〉・障子・屏風・几帳・笛・琴など、あらゆる道具類を文様化したもので、単独で用いるものもあれば、花などを取り合わせたものなど多種多様にあります。桃山時代から染織品に用いられ、江戸時代に入ってからさらに多様化しました。

鏡裏文〈キョウリモン〉
裏鏡〈ウラカガミ〉・古鏡〈コキョウ〉とも呼び、古い鏡の裏側にある模様を、鏡そのものの形を生かして文様化したものをいいます。正倉院の中には、裏を金・銀・螺鈿〈ラデン〉で飾った華麗なものが残されています。鏡と共に紐を添えて図案化したものも多く、礼装用のキモノや帯の文様に用いられています。

源氏絵文〈ゲンジエモン〉
『源氏物語』の場面を描いた絵を文様化したものをいい、絵画性の強い文様で、唐織などに全面的に表現しているもののほか、扇面〈センメン〉や雪輪〈ユキワ〉、貝合わせなどの輪郭のなかに描いたものがあります。主に友禅や帯地の文様に用いられています。

源氏雲文〈ゲンジグモモン〉
雲文の1つで、絵画や文様の中を洲浜形に仕切って、雲がたなびいた感じを表わしたものです。「源氏物語絵巻」に使われたことから源氏雲と呼ばれるようになりました。雲に隠れた部分で時間や空間の推移を想像させ、さらに装飾的効果も与えています。留袖や訪問着に用いられています。

源氏車文〈ゲンジグルマモン〉
室町から江戸にかけて新しく生まれた文様で、御所車ともいいます。平安時代に貴族の用いた牛車を文様化したもので、様々な建物、風景などを添えて描かれています。それらの多くは「源氏物語」を連想させることからこの名がつきました。古典柄の代表として留袖・振袖・帯などに用いられています。

源氏香〈ゲンジコウ〉
香合わせという遊びで、香の名を当てる時に使う符号を文様化したもので、縦5本の線のつなぎ方を変化させて52の組み合わせを作ります。それぞれに源氏物語の巻名を付けたことで源氏香と呼ばれるようになったわけですが、桐壷と浮橋の巻はありません。

高台寺蒔絵〈コウダイジマキエ〉
蒔絵とは、漆や金銀粉などを使って器物に絵模様を表わす漆工〈シッコウ〉美術のことですが、高台寺蒔絵は、京都の高台寺に残された蒔絵で、1つの様式を持ち、桃山時代の漆芸〈シツゲイ〉を代表するものです。菊、桐などの秋草を中心に描いた美しい器物をキモノの文様にも用いています。

格天井文〈ゴウテンジョウモン〉
格天井は、格子状に組んだ木の上に板を張った天井のことで、その中に絵柄を詰めた文様のことを格天井文といいます。これは、神社仏閣の天井絵を衣服の文様として取り入れたもので、立派で美しく、重厚な雰囲気のあるものが多く見られます。礼装用のキモノ・帯に用いられます。

光琳水文〈コウリンミズモン〉
尾形光琳作の水文様で、曲線を描く水流が幾重にも重なり、ところどころ渦を巻きながら下へ送られていく形式をとっています。代表的な作品に熱海美術館蔵の「紅白梅図屏風」があります。

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