現在主に使われている文様1

秋草文〈アキクサモン〉
秋の野に咲く草花を文様化したもので、桔梗〈キキョウ〉・萩〈ハギ〉・女郎花〈オミナエシ〉・撫子〈ナデシコ〉・葛〈クズ〉・薄〈ススキ〉・藤袴〈フジバカマ〉の秋の七草や竜胆〈リンドウ〉などがあります。季節を一足早く取りいれることで、涼感を与えるので、夏のキモノや帯の柄によく使われます。

揚羽蝶文〈アゲハチョウモン〉
緑黄地に黒い筋や斑文〈ハンモン〉のある大形の華麗な蝶を文様化したもので、鳳蝶〈ホウチョウ〉とも呼ばれています。平安中期以降になって、蝶文が流行し、平家ゆかりの家々の家紋となり、今日に受け継がれています。牡丹や撫子などと共に小袖に描かれていましたが、現代でも、振袖や留袖に好んで用いられています。

葦手文〈アシデモン
色紙などに歌を書く時、水を描き、文字を葦〈アシ〉がなびいたように絵画的に書いたものを葦手といいます。後に歌の意味を絵と文字で組み合わせて表わすようになり、葦手絵・歌絵と呼ぶようになります。色紙の他に、蒔絵や衣服の文様としても、広く持ちいられるようになりました。

網代文〈アジロモン〉
竹・葦・檜皮などを細かく薄く削って、斜めや縦・横に編んだものを網代といいます。天井・垣・屏風・牛車の屋形、笠、団扇〈ウチワ〉などに、広く使用されてきましたが、キモノの文様としても好まれ、染織品の地紋などによく用いられます。

網干文〈アボシモン〉
漁に使う網を棒に吊るし、三角錐〈スイ〉状に干した姿を文様化したもので、波や葦、千鳥〈チドリ〉などと共に海辺の風景の中に取り入れたものが多くあります。江戸時代の頃から好まれ、友禅染の絵柄として、また、沖縄の紅型〈ビンガタ〉の模様にもよく用いられています。

荒磯文〈アライソモン〉
波が打ち寄せる磯の風景を岩や千鳥をあしらって文様化したものなどがあり、名物裂〈メイブツギレ〉にも見られることから、中国の明の時代に作られ、日本に伝来したものと思われます。現在では、帯の文様やゆかた地の文様として使われています。

有栖川文〈アリスガワモン〉
名物裂の錦に見られた文様で、鹿・馬・飛竜〈ヒリュウ〉などを菱形・たすき形・偏平〈ヘンペイ〉な八角形などの直線で囲んだものがあります。本来は、色彩豊かな織文様ですが、拡張高い美しさが好まれて、留袖や訪問着などにも染の技法で用いられています。また、白生地の地紋としても使われています。

筏文〈イカダモン〉
筏は木や竹を並べ、蔓〈ツル〉や縄で結んで川を下るのに使ったものですが、その筏に花を載せたり、花吹雪を添えた花筏文や、人物を乗せて風景画的に染めたものもあります。風景画的な文様は、男物の襦袢〈ジュバン〉などによく使われています。

市松文〈イチマツモン〉
黒と白・赤と白などの異なった二色の正方形を交互に並べた形の文様で、石畳文〈イシダタミモン〉・霰文〈アラレモン〉とも呼ばれています。これは、江戸時代の中頃、歌舞伎役者の佐野川市松が袴〈ハカマ〉に着用して舞台にでたことから、市松文様と呼ばれるようになりました。

井筒文〈イヅツモン〉
幾何学文の1つで、井戸の上部の縁を木で四角く組んだ形(井桁〈イゲタ〉)を文様化したものです。以前は正方形のものを井桁、斜めのものを井筒といいましたが、現在では混用されています。染・織共に用いられ、井の字のつく家系の紋章としても多く見られます。

糸巻文〈イトマキモン〉
糸巻きを文様化したもので、板状で正方形の四辺の中央をくぼませて糸を巻くものや、立方的な枠になったものがあり、それらを意匠化し、文様にしたものです。桜花などをあしらった可憐な文様は、女児用のキモノに見られます。

稲文〈イネモン〉
稲の形を文様化したもので、染織品に使われることは少なく、紋章として使われることが多いようです。また、京都伏見の稲荷神社の「束稲〈タバネ〉」をはじめ、神紋としても歴史があります。他に、稲波文・稲の丸などがあります。

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