現在主に使われている文様3

笠松文〈カサマツモン〉
松を題材とした文様は数多くありますが、これは松葉を笠のように見たて、枝を紐のように組み合わせた文様で、単独で扱うよりも、2つ、3つ重ねて、重厚な雰囲気を出すように使われます。振袖や留袖、訪問着、袋帯などによく使われています。

片輪車文〈カタワグルマモン〉
車輪が水の流れにかくれて、半分見えなくなった状態を文様化したものです。これは、平安の頃の王朝貴族が用いた牛車の車輪を乾燥から防ぐために、水に浸していたものを図案化したといわれています。車輪だけ描くことも多いのですが、草花を添えた雅やかなものも留袖などに見られます。

霞文〈カスミモン〉
霞は本来形のないものですが、日本的な感覚で、遠近感や時間の移り変わりを表現するのに用いられました。模様構成上、ぼかしや模様の区切り(霞取り)などがあり、なくてはならない文様です。また、霞文様定型化した「工」霞は、中に吉祥文様を詰めたりしてよく使われ、工の字を4つ結んだものを春霞といいます。

花鳥文〈カチョウモン〉
花と鳥とを組み合わせた文様のことで、正倉院に残されている文様が多く、花や鳥の名前がはっきりわからない場合に花鳥文といいます。花鳥唐草文や花鳥天平文などが有名で、染織品に広く用いられています。

鹿子〈カノコ〉
鹿の背中の白い斑文〈ハンモン〉を文様化したもので、古くから用いられています。染織品では、織・刺繍・絞りなどで表現しますが、中でも絞り染は有名で、生地全体を鹿子絞りにしたものはたいへん高価です。キモノ・羽織・長襦袢の他、半衿や帯あげ等、広く使われています。

唐草文〈カラクサモン〉
蔓草〈ツルクサ〉の蔓や葉がからみ合って曲線を描いていく文様で、果実をあしらったものもあります。世界的に古くから見られる文様で、古代エジプト・メソポタミアに幾何学的な印象の強いものが残されています。日本には、中国を経て伝えられ、葡萄唐草〈ブドウカラクサ〉・牡丹〈ボタン〉唐草・菊唐草などがあります。

唐子文〈カラコモン〉
唐子は中国の装いや髪型をした童子のことで、近世、唐子人形として文様化されました。異国調の珍しさ、可愛らしさが好まれ、キモノ・帯・羽織裏や陶磁器などに多く用いられています。

唐獅子文〈カラシシモン〉
しし(獅子)・いのしし(猪)・かのしし(鹿)を区別するのに、中国から伝わったことから唐獅子と呼ぶようになりました。日本では知られていない動物なので、実物とかけ離れて意匠化された文様が見られます。正倉院に残る綾や錦にも多く見られ、「四騎獅子狩文錦〈シキシシカリモンノニシキ〉」などがあります。

唐花文〈カラハナモン〉
中国から伝えられた花形文様で、空想・現実の花を集めた様々なものがあります。インドやペルシャなど西方的要素を強く含んだ文様で、中央に正面花を置き、周囲に二重・三重に花を配置したものを1つのモチーフに表わしたものなど多数あります。袋帯など、礼装用によく使われます。

雁木文〈ガンギモン〉
雁木とは、雁〈カリ〉が列をなして空を飛ぶ時のようにぎざぎざした形のものや、階段などをいいます。文様では、角文の1つで、正方形をずらして2つ重ね、8個の角のある形にしたものをいいます。単独で用いられることはほとんどなく、他の文様を囲むのに多く使われています。

観世水文〈カンゼミズモン〉
水文様の代表的なもので、能楽の家元観世太夫が定式文様として使用したところから、名づけられた文様です。波の様子を横長にし、上下、左右に連続させた流暢〈リュウチョウ〉な図柄で、白生地の地紋や帯地としても使われています。

幾何学文様〈キカガクモンヨウ〉
直線・曲線・点・画などの幾何学的な図形を文様の素材として用いた文様で、抽象的な印象を与えます。有職文様の中に亀甲〈キツコウ〉・立涌〈タテワク〉・青海波〈セイガイハ〉等、連続模様を構成するものがあります。

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