挿友禅 |
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挿友禅工程は、手描友禅工程の中で、最も華やかであり、かつ重要な位置を占める工程です。友禅染のメインである絵模様部分を染め上げるのですから、まさに友禅染の命を吹き込む作業といえるでしょう。
挿友禅は、特に色彩感覚が重視されます。同じ図柄、模様であっても、そこに描く色の組み合わせによって、できるイメージがまったく違ったものになってきます。それだけに挿友禅する人独自のオリジナリティー(創造性)が重要な鍵となる工程といえるでしょう。 |
模様を染料液で染める前に、引染の時と同じ理由から地入れを行います。
挿友禅の色合わせは、配色を頭の中でイメージしながら、染料や顔料を混ぜ合わせていきますが、イメージの色を色見本に置きかえて、具体的に色合わせしていく方法を一般的には用いています。
先に染料元液や胡粉液を用意し、一色ずつ色合わせしていきます。絵皿に染めようとする色になるように数種の染料液を徐々に加え合わせ、求める色を作ります。別に用意した試験布にその色を刷毛や筆で塗って調べます。この場合染料液が乾燥してからでないと本当の色がわからないので、注意しましょう。求める色が違うようなら、新しく作り直す方がいいでしょう。思う色にならない時に、さらに染料液を加えても、不明瞭な色になる一方です。(引染の時と同じです)
また、鮮やかな色の彩度をおとしたり、明度を下げたい時は、補色をほんの少し混ぜます。これを「サビ」をつけるといいます。
<ポイント>
挿友禅で染料液と胡粉液を混ぜて使うことを「具入り」と呼んでいます。これは色調をやわらかくし、淡い色でも量感や存在感を感じさせる効果があります。
「具入り」を作る場合、染料の色合わせがほぼ出来上がった段階で胡粉液を入れます。胡粉液の量は、意図する色によって異なりますが、あまり多く入れない方が良いといわれています。
必要な色数だけの色合わせができれば、そこにカゼインの溶液(糊料)又はふのり液(両方入れる場合もある)を入れます。これらの溶液を加えることで、糸目から染料がにじみ出すのを防ぐことができます。
<ポイント>
顔料である胡粉(白色)は、染料に比べて粒子が大きく、接着液を混入して挿すことから、糸目を越えてにじみ出すことが比較的少なくなり、初心者にとっても扱いやすくなるでしょう。 |
挿友禅を行うための専用机で、机の中央に四角い穴があいており、その下に熱源が置けるようになっています。この熱源には昔は炭を用いていましたが、現在では入手しにくいので、電熱器が多く使用されるようになりました。また、一部では、都市ガスも使われています。
<ポイント>
挿友禅を行う時、必ず染めようとする生地の下に熱源を置き、熱であぶりながら作業を進めます。その理由には、!染料液の乾燥を早め、糸目糊から染料がにじみ出すのを防ぎます。
!地入れをしてある生地の裏まで、熱によって染料液を浸透させ、生地にしっかり染着させます。
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挿友禅は、生地を袖、身頃などに切り離したままで伸子掛けをし、部分的に進めていきます。訪問着などは、袖・肩・裾・ゆき前という順序で進めます。また、16メーター(4丈物)など長尺物の場合は、八掛の部分から始めます。
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糸目の端から順に色を挿していきます。刷毛に染料液をつけすぎるとにじみ出す原因となるので、皿で何度かしごいてから挿します。糸目の手前に刷毛をおろし、そのまま糸目の端まで刷毛を運びます。 色挿しする模様が小さい場合は、一度含ませた染料液だけで挿せますが、ほとんどの場合は、何度かつけ足さなくてはなりません。その場合、刷毛に染料液がなくなりかけたらその部分は必ずカスらすようにしておきます。そして染料を刷毛に取り、カスらせた部分と重なるようにして挿していきます。こうすることでつぎ足した部分がむら染めになるのを防ぎます。
<ポイント>
あまりゆっくり挿していると、途中で染料液の水分が生地に浸透し、カスらせてもむら染を発生させます。刷毛は手早く運ぶことが大切です。
<ポイント>
挿していく色の順序は、淡い色から濃い色へ移っていくのが基本です。
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