文様の解説2 小袖の文様(1)
 

小袖の文様
桃山から江戸にかけて、小袖の文様は、その時代背景と強く結びつきながら変化し、
今日のキモノの文様と配置の基本となるものを築き上げてきました。
それぞれの時代を反映した特徴ある小袖とその意匠から、各時代の小袖を
「桃山小袖」・「慶長小袖」・「寛文小袖」・「元禄小袖」などと、それぞれ呼んでいます。
ここでは、現在のキモノの形と意匠の基礎を築いたといわれる桃山時代の小袖から見ることにしましょう
〈桃山小袖〉
桃山時代は小袖の基本型が完成した時代で、その文様や配置にも大いに特色があります。
桃山時代の小袖に見られる文様の特徴は、例えば一定の区画をもうけて、そのなかに文様を詰める手法が上げられます。小袖全体を段状に区切ったり、半身ずつ異なった裂を用いたり、肩と裾を雲形や直線に区切ったものなどがあり、その内に文様が表わされます。この頃から、武士の胴服にも大胆な文様が取り入れられ、能装束もさらに豪華になってきます。
辻が花・摺箔・繍箔などを自由に取り入れ、明るく積極的な時代の空気が反映しているといえるでしょう。
桃山時代に見られる代表的な構図を紹介します。

片身替り〈カタミガワリ〉
背縫を境に左右の身頃・袖の色を変えたり、違った文様の裂地を使った小袖を片身替り小袖と呼びます。
古代から中世にかけての小袖は、庶民の日常着であったため、裂地をやりくりする方法から生まれたと考えても興味があります。しかし、主として桃山時代の能装束に好んで用いられるようになったことで、デザイン的価値が認められたものと思われます。大胆な対照的文様構成は、舞台効果をさらに高めたということです。
また、鎌倉時代の絵巻物に見られることから、その頃すでに着用されていたと思われます。
繍箔小袖
肩裾〈カタスソ〉
肩の前後と衿、裾の前後(あるいは前身のみ)を霞型・洲浜型・直線などに仕切り、その中にだけ箔や繍・描絵で花鳥・流水などの美しい文様をほどこしたものです。
 
小袖の胴の部分に余白を残したこの意匠は、上流階級の女性が、打掛を重ねたり腰巻をつけたりして、小袖の上部だけを見せた場合を考えたものと思われます。
 
重ね着が簡略化される過程における形式の1つともいえるでしょう。その後庶民にも広められ、小袖の他、打掛にも用いられるようになりました。

段替り〈ダンカワリ〉

 異なる文様、異なる色彩で小袖全体を段に区切り、それを繰り返した文様です。元来は、異なった裂をつなぎ合わせたものだったのかもしれませんが、桃山時代に入って、上流階級の女性の小袖に用いられたことから、より豪華なものが作られるようになりました。
異なる色で段になるように織り出された小袖に刺繍や箔が併用され、その絢爛たる構成は、後に江戸時代の能装束として定着します。