文様の解説1 正倉院の染織文様
 
正倉院の染色文様
日本最古といわれる染織文様は、飛鳥時代や奈良時代の上代裂(法隆寺裂・正倉院裂)と呼ばれる染織遺品に見られます。
これらの遺品の大部分は、絹織物をはじめ、麻織物・羊毛製の氈〈セン〉(毛で形成した敷物)などを素材に作られています。中でも錦には、ササン朝ペルシャや唐の文化をそのまま伝える華麗で素晴らしい作品が、数多く残されています。
(ここのページでは正倉院の資料をストレートい掲載することができないので、正倉院紋様の応用編となりますがお許し下さい。)

錦には、経錦〈タテニシキ〉と緯錦〈ヌキニシキ〉があり、古くは飛鳥時代に伝来したといわれる経錦が残されていますが、正倉院の錦の大半は緯錦です。多色を駆使(クシ)した美しい錦が、はるか昔の異国の情緒を現代にまで伝えてくれます。

染めの方では、臈纈〈ロウケチ〉(臈纈染)・纐纈〈コウケチ〉(絞り染)・夾纈〈キョウケチ〉(板じめ染)の三纈と呼ばれるものがあり、中でも夾纈は多彩で、綾・羅・ 〈アシギヌ〉地に、赤・緑・黄・白・青・黒・紫など、ふんだんに色を使い、錦には見られない滑らかで美しい形を描き出しています
その他の技法としては、摺絵〈スリエ〉・刺繍・花氈〈カセン〉などが見られます。


文様の題材としては、宝相華〈ホウソウゲ〉・動・植・人物と多種多様です。植物においては、唐花・唐草といった空想的なものが多く、わずかながらに、棕櫚〈シュロ〉・棗椰子ナツメヤシ〉・百合といった写美的なものも見られます。

動物においては、中国の空想的霊獣である龍・麒麟〈キリン〉・鳳凰・獅子のほかに、鹿・馬・孔雀・小鳥・蝶……等、実在する動物を文様化したものが多数見られます。
また、これらの動・植物に人物を加えたり、組み合わせも様々で、「狩猟文」〈シュリョウモン〉・「樹下鳥獣文」〈ジュカチョウジュウモン〉などと呼ばれるものも多数残されています。


正倉院裂に見られる数々の文様は、ササン朝ペルシャと唐の文化がみごとに融け合い、均整がとれた美しさを醸〈カモ〉し出していますが、どちらかといえば、きわめて旺盛な力強さを特色とするものです。