染匠用語の解説



アール・ヌーボー
19世紀末、ベルギー・フランスに起こり、ドイツ・オーストリアに波及した建築・工芸の新様式。植物の枝や蔓〈ツル〉を思わせる、流れるような曲線を特徴とする。

藍瓶 (あいがめ)
染色用具の1つ。藍染をする時、染料液を入れる大きな瓶。藍壷ともいう。約130〜360リットル入る。昔の中形や藍染の小紋はすべて、この中で浸し染めされた。

合い口 (あいくち)
仕立て上がったキモノの縫目を境にした、模様と模様との合わせ目を合い口という。

藍染 (あいぞめ)
藍は植物染料の一種。
日本で最も古い藍は山藍といわれている。その後中国から伝わったのが蓼藍〈タデアイ〉で、日本全国に伝わる。昔は草をそのまま乾燥して用い、水に入れて腐敗(発酵)する時の還元性を利用して生地に染めつけ、酸素による酸化で発色させていた。後には、乾した葉を大気中で水を打って腐敗させ、 〈スクモ〉を造って貯蔵し、さらに玉藍にして貯蔵していた。必要に応じて、そのつど利用する。

あしぎぬ
経〈タテ〉・横〈ヨコ〉の糸が、太細入り混ざった不揃いの平組織の絹。粗悪な絹という意味もある。

足付け( あしつけ)
一般に、黒の地色に用いるぼかし染めのことをいう。

あしらい
友禅染のなされた模様の部分に、ワンポイント的な刺繍や金加工を加えることをいう。

あたり
模様をどこに置くか等の目安をつけること。位置づけ。

誂え染( あつらえぞめ)
生地・柄・色・加工方法等を好みに応じて染めることをいう。別誂え(染)や誂えと呼ぶ場合もある。主に、色見本や柄見本から、好みの色・柄を選択し、寸法等を指定して染色すること。

後友禅加工( あとゆうぜんかこう)
友禅染工程のうち、地染をした後に、挿友禅などをしていく加工工程をいう。

雨コート( あまこうと)
雨の日の外出時に、長着の上に着用するコートをいう。(=和装レインコート)

綾織物( あやおりもの)
生地の表面に表れた、様々な線や形の模様のことで、斜めに交差した組織をもつもの。

洗張り( あらいはり)
キモノの手入れの1つ。汚れたキモノや布地をほどいて洗い、板に張ったり伸子を張ったりしてしわを伸ばし仕上げる。

袷 (あわせ)
裏をつけて仕立てたキモノの総称。袷羽織・袷長襦袢なども含む。男物袷の裏は通し裏。女物は胴裏・裾回しを用いて仕立てる。

生洗い (いけあらい)
衣装に付着した、汚れや汗などをしみ落としで補正する方法。現在の和装クリーニングに相当する。

衣桁 (いこう)
キモノを掛けておく木製の家具で、鳥居に似た形をしている。展示用は、キモノの模様がよく見えるようにするのに用い、家庭用は、着用後のキモノの汗抜きやしわを伸ばすために用いる。

板締絞り (いたじめしぼり)
布地を様々な形に屏風だたみし、両面から板を当てて強く縛り、染色する方法で、板の当たっていない部分が染色される。布の折り方、板の形によって様々な模様が染め出される。模様の端がぼかしたように仕上がるのが特徴的。

板場友禅 (いたばゆうぜん)
型友禅や摺友禅の型置をする場所を板場といい、そこで部分的に印捺し、伏糊の後に板からはがして、しごき染や引染で地色を染めるものを板場友禅という。

一珍染 (いっちんぞめ)
友禅染の一種で、小麦粉を主成分とした糊を一珍糊という。この糊で糊置し、色挿しをした後、蒸し工程に移る前に生地を斜めに引いて糊を掻き落とす方法を用いた技法をいう。

色糊 (いろのり)
染料を混ぜた糊のことをいう。また、もち粉や米ぬかなどの天然の糊料(元糊〈モトノリ〉)に染料を合わせて作る。写し糊、友禅糊ともいう。

色目( いろめ)
配色による色合いや、色調のことをいう。また、単に色彩の名称をいう場合もある。

印金 (いんきん)
金彩加工技術の昔の呼び名,別名。

打掛 (うちかけ)
近世武家女子の夏以外の礼装で、小袖の上に打ち掛けて着る表着〈ウワギ〉をさす。形は小袖と同形で、袿〈ウチキ〉からきた言葉といわれている。現在では、花嫁衣裳・舞台衣裳にのみ用いられている。四季の花を主体にした総模様のものが多い。関西地方では、かいどりともいわれている。

写し染 うつしぞめ)
捺染方法の1つ。写し・糊写しともいう。型紙を用いて、染料を加えた糊を布面にヘラで型付けし、模様を出す染色方法。手工捺染・型紙捺染と同様。また、筆や刷毛で写糊を布面に手描することもある。

初着 (うぶぎ)
産衣とも書き、「うぶぎぬ」の略語。新生児に初めて着せるキモノ。

裏打ち (うらうち)
伸縮の著しい布に、一定の張りを与えたり、その状態を保つために、裏に別布などを当てて、補強したりすること。絞りのしぼが失われないように、裏から薄地の布を当てたりする。

裏地 (うらじ)
袷仕立ての表地に対し、その裏側に付ける布をいう。和服の裏地は普通、胴裏・裾回し(八掛)・羽裏など、それぞれ専用に織られている。裾回しには、着る人の好みや、表地との配色によって選び、無地・ぼかし染・柄物などがあり、羽裏は羽織を脱ぐことを配慮し、すべりがよく、色柄の美しい豪華な模様を染めた額裏をつけたものがある。また、表地を裏地として用いる場合もあり、無双と呼ばれている。

漆箔 (うるしはく)
鳥の子紙(良質の和紙)に、濃厚な漆を塗り、黒い光沢のある箔状にしたものをいう。その他に、赤などの色漆箔もある。

繧繝(暈繝) うんげん
1つの色を濃色から淡色へ断層的に重ねて彩色する手法。また、1つの色以外にも、よく似た色を順に並べて仕上げる技法も、繧繝と呼ばれている。

江戸褄模様 (えどづまもよう)

小袖の模様づけの1つ。長着の袖の褄に近い部分に模様を配置したもので、江戸後期からある。現在では、留袖の模様づけがこれにあたる。

絵羽 (えば)
絵羽は、模様のつけ方、縫い方、模様そのものなど、広範囲に用いられる言葉で、絵羽模様は、生地を染める前に白生地を裁断してから、キモノの形に仮縫いし、背や脇、衽、袖などの縫目を渡って模様が続くようにしたものをいう。この時の仮縫いすることを絵羽縫・仮絵羽仕立てといい、これの良し悪しで次の模様づけに影響を多分に与えるので、重要な工程といえる。現在の振袖・留袖・訪問着・羽織などがこれにあたる。

絵羽織 (えばおり)
白生地を仮縫いし、縫目に渡って模様を染めた羽織。長着の絵羽づけ同様に、模様が一続きになっているもの。

衣紋掛 (えもんかけ)
着用後のキモノをかけて、風を通したり、しわを伸ばしたりするための道具。折り目を正しくするためにも用いられる。和服用のハンガー

衿 (えり)
衣服の首回りにあたる部分の名称をいう。長着の衿には掛衿があり、掛衿には、長衿と半衿がある。江戸時代の長着の掛衿には、ちりめん・ビロード・黒襦子・紋塩瀬などの美しい生地が使われていた。また、襦袢の半衿には、羽二重・ちりめん・絽・紗・絞り染などの絹織物が用いられてきた。また、掛衿はキモノの衿を補強する働きもある。現在の長着には、共通の掛衿を掛けるので、共衿とも呼ばれる。

縁蓋 (えんぶた)
影貼〈カゲバリ〉ともいい、金彩や友禅等、加工したい部分の輪郭外に、粘着テープや硫酸紙等で地隅〈ジグマ〉を施すこと。

大柄( おおがら)

中柄・小柄に対して、柄の大きなものをいう。染物においては、派手な柄のことをいう場合が多い。

衽 (おくみ)
左右の前身頃の端につけた半幅の布のことで、キモノの前を合わす時の利便が図られている。

落し箔 (おとしはく)
金銀箔の不定形な小辺をちりばめた箔加工。技法をも指す。

帯揚げ (おびあげ)
女帯を背にしょい上げ、形よくするための小物。太鼓結びや下げ結びにする時、結び目などが下がらないようにするための布。薄手の生地で柔らかく、よく締まるものが好まれる。

帯締 (おびじめ)
女帯の結び目を押え、帯結〈オビユイ〉を固定させるために用いる紐。

御召( おめし)
御召縮緬の略称。高級な先染着尺地を指す。徳川13代将軍家斉が好んで着用したためこの名があるという。糸質・織り方・柄・産地などによって、多くの種類がある。


化学青花 (かがくあおばな)
科学的に作られた青花液で、ヨード液にでん粉を混ぜて作る。青花液の代わりに用いたことから、代用青花とも呼ばれている。

化学染料 (かがくせんりょう)
合成染料ともいい、石炭や石油などを原料に精製した染料。直接染料・酸性染料などがある。

加賀紋 (かがもん)
衣服につける紋の一種。加賀友禅染から出た紋といわれている染紋。

加賀友禅 (かがゆうぜん)
金沢地方で生産される友禅で、独特の彩色や虫喰いなど、模様に特徴がある。一般には、手描友禅染を指す。京友禅が早くから、レーキ染料(染料のレーキ化)を使用していたのに対し、大正の頃まで顔料を使用していた結果、臙脂〈エンジ〉、藍、黄、緑などの彩色と虫喰いという独特の模様を生んだ。

カゼイン (かぜいん)
乳中にある一種の蛋白質。硼砂〈ホウシャ〉を混ぜたカゼイン水溶液は、接着力が強く、熱を加えることで、より強く固まる。この性質を利用し、顔料や染料液の接着剤として使用されている。

花氈 (かせん)
花は文様のことを表わし、氈は毛氈で、毛を圧縮したフェルト。文様のある毛の不織布。中国の西方オリエントに起源をもち、日本へは中国を経て、奈良時代に伝わり、正倉院に残されている。

肩揚げ( かたあげ)
子供用のキモノの衽を調整するため、肩山を中心に前身頃にかけて縫い上げをとることで、子供の成長に応じて加減する。

型紙( かたがみ)
和紙を3〜4枚、紙の目を交互に柿渋で貼り合わせ、乾燥した後、模様を写して彫刻刀で模様の部分を切り抜いたもの。手捺染、金彩加工などに用いる。

型染 (かたぞめ)
染色方法の1つ。模様を染める時、型紙などを用いて染める。手描染に対する語。同じ模様を繰り返し染めることができる。代表的なものに、小紋・中形・更紗・紅型・型友禅がある。その他に近年では、スクリーン捺染・ローラー捺染などが行われている。

帷子 (かたびら)
衣服の一種で、裏無しの単〈ヒトエ〉物の総称。江戸時代末期より、絹・木綿の裏無しを単といい、帷子は麻布の単物を指すようになる。

かちん
茶色に用いる顔料の一種。油煙を膠〈ニカワ〉で固めた墨。主に細線描き技法に用いる。

曲尺 (かねじゃく)
長さの単位の1つで、単に尺ともいう。1尺は約30センチ。金属製の直角に曲がったものさしは、長い方に1尺5寸(約45.5センチ)、短い方に7寸5分(約22.7センチ)の目盛がついている。

唐織 (からおり)
古来中国より伝来された綾・紋織物の総称。多彩な縫い取り糸を用いて織るので重圧感があり豪華。

空蒸 (からむし)
蒸しの方法の1つ。湿度の少ない蒸気を当てるので、生地への給湿が少なくなる。手描友禅や糊分の少ない無地物の蒸し工程に利用されている。

仮絵羽仕立て( かりえばじだて)
上絵羽ともいい、下絵羽も含まれる。絵羽付けされた模様の生地を絵羽通りに仮仕立てすること。上絵羽の合い口は広いめに縫い、模様が並んだように仮仕立てする方が、本仕立てする場合に都合が良い。

含金属酸性染料 (がんきんぞくさんせいせんりょう)
酸性染料の一種で、化学的な構造中に、クロムやコバルトの金属が入ったもので、染色している間に、繊維と金属と染料が固く結びつく性質を持つ染料をいう。

顔彩仕上げ (がんさいしあげ)
友禅染をより効果的にするための技法で、模様の中の人物の顔や草木、花の枝先花弁などの繊細な部分を、一旦模様を染めた後に、描いていく方法。

間道 (かんどう)
縞〈シマ〉の意味。古く渡来した外国産の縞織物のことをいう。

顔料 (がんりょう)
染料と並ぶ重要な着色料。水にも油にも溶けない色素。有機顔料と岩絵具のような無機物の鉱物顔料とがある。白色はすべて顔料に含まれる。


着尺( きじゃく)
和服の長着に仕立てるための生地。標準丈は約11.4メートル、幅約36センチ。白生地に織り出した後に染める先着尺と、染めた糸を使って柄を織り出す織着尺とがある。初着尺=友禅・小紋・更紗・紅型など。織着尺=御召・紬・銘仙など。

被せ (きせ)
和服を仕立てる時、縫い込み部分を割らずに一方へ織る際、縫目より少し奥を折山とする。この縫い目と折山の間のわずかな部分のことをいう。着用した時、引張によって受ける力を減少させ、布地がいたむのを布施ぐ作用がある。

着丈 (きたけ)
和服の長着類に用いる言葉で、身丈(仕立て上がりの寸法)に対して、着用した時の実際の丈のことをいう。着丈は普通身長に対する と概算する。着丈寸法は、肩山から裾までを計る。

逆雲 (ぎゃくぐも)
雲と雲のすき間を表わした形。裏雲ともいう。

京友禅( きょうゆうぜん)
京都で生産される友禅染の総称。金沢で生産される加賀友禅やその他の地方で生産される友禅とを区別するのに用いられる言葉。

切継ぎ (きりつぎ)
縫い合わせ、寄裂〈ヨセギレ〉ともいい、色や模様の異なる2種類以上の小裂〈ギレ〉をつなぎ合わせ、1つの衣服にする技法。キモノや帯、羽織などに応用する。

切嵌め (きりばめ)
1つの裂地に別裂を切ってはめ込み、文様を構成する技法。キモノ、羽織、帯などに応用する。

裂取り (きれどり)
柄置きの1つで、不定形な形を寄せ集め、一定の区画を作る(パッチワーク風)。さらに区画内には別々の小柄を配したり、色を変えたりして表現する。

金泥描き (きんでいがき)
金粉を膠〈ニカワ〉液でといたもので、模様を描いたり顔彩仕上げと同様の使い方もする。

金通しちりめん( きんとうし)
織物全体に、緯糸に金糸を用いたもの。

金襴 (きんらん)
織物の名称。襴地(三枚綾地)に金糸を織り込んだものを指すが、一般には、金糸を織り込んだ織物を総していう。室町・桃山時代に多く渡来し、名物裂として武家や茶人に珍重された。日本では、天正年間(1573〜92)に生産されるようになった。能装束、女帯に用いられる。

草木染( くさきぞめ)

天然の植物色素を染料として染色すること。また染色されたもの。

鎖繍 (くさりぬい)
刺繍技法の1つ。鎖状に線を表わす繍い方。線・輪郭を太くはっきり表現したい時に用い、流動感を与える。

鯨尺 (くじらしゃく)
和裁用に用いた尺度。もともとは、鯨のひげで物差しを作ったためにこの名があるという。鯨尺1尺=曲尺〈カネシャク〉1尺2寸5分(約38センチ)を規準とする。曲尺を小尺、鯨尺を大尺・呉服尺ともいう。

首抜模様 (くびぬきもよう)
キモノの模様の付け方の1つ。首から肩にかけて、模様を付けることで、江戸前期の小袖に見られる。現在でも、祭礼の揃いの浴衣などに使用されている。

繰越し (くりこし)
衿肩明きを肩線より後ろにあけること。抜き衿にして、着やすくし、女らしさを出すためにあけるので、子供物、男物には必要がない。

芥子縫い(けしぬい)

刺繍技法の1つ。芥子粒のような小さな点を表わす繍い方。布地の経緯の糸を1本ずつ返し針をして点を表わす。縫紋や模様の中を繍い詰めて、輪郭線や霞のようなぼかし、花芯などの表現に用いられる。

堅牢度 (けんろうど)
染織物の、日光・洗濯・水洗・汗・摩擦などに対する耐久性、丈夫さのあどを表わす。堅牢=固くて丈夫なこと。

小柄 (こがら)

大柄・中柄に対し、柄の小さいものをいう。染物では、小紋と同様に使う場合もある。小紋は単色の定形文様など、ほとんどが白あげなのに対し、小柄は、小さい柄であっても、多色を用いる場合が多く、一般的には区別されている。

腰揚げ (こしあげ)
子供用のキモノを腰の位置で縫い上げ、丈を調節すること。肩揚同様子供の成長に合わせて調節できる。また、可愛らしさを添える役目もある。

腰巻 (こしまき)
近世の武家婦女用の礼服で、盛夏の頃着用したいもの。小袖仕立てのものが多い。キモノを腰に巻きつけたようになるのでこの名がついた。

豆汁 (ごじる)
生大豆を水に漬けて膨らまし、少量の水を加えてすりつぶしたものを布でくるみ、絞り出した乳状の液体。豆汁には、大豆蛋白〈タンパク〉が含まれているので、熱を加えると凝固、沈殿する。この性質を応用し、引染や友禅の色挿しの地入れに用いる。

小袖 (こそで)
袖口の広い装束(広袖)に対し、袖口の小さな窄〈ツツ〉袖になったキモノのこと。桃山以降、生活着として、表着に変化した。現在の長着の原形となるもの。

古代五色( こだいごしょく)
キモノの配色に用いられる色のことで、特に統一されているわけではないが、朱・利久(深緑)・紺(納戸)・紫・黄を指す場合が多い。また、原色ではなく、少し渋味のある色をいう場合が多い。

骨上げ (こつあげ)
模様の全体や一部分を糊の太細線の変化で表現する技法。線上げともいう。

胡粉 (ごふん)
蛤〈ハマグリ〉などの貝殻を砕いたものを原料に、精製した白色顔料。染色において、白色は、胡粉を使用することが多い。

相良繍 (さがらぬい)
刺繍技法の1つ。布表面に結び玉を作り繍う方法。男物の縫紋や小鳥の目などに用いる。この技法を変化させたものも多い。

先友禅加工 (さきゆうぜんかこう)
糸目糊置をして、地色を染める前に友禅加工する工程を指す。

刺し繍 (さしぬい)
刺繍技法の1つ。模様の輪郭線上に針足を揃え、内側へ刺し込み、色の濃淡、糸の太さなどで変化をつけ、絵画的な花や鳥などを表わすのによく用いられる。

挿し伏せ( さしふせ)
ゴム糸目と、糊伏を合わせた加工方法の総称。

鮫小紋 (さめこもん)
小紋染の文様の1つ。鮫皮〈サメガワ〉のように、生地面に細かい白抜き状の点を染め出したもの。

紗綾織物( さやおりもの)
絹織物の1つ。地が平組織で文様が経の四枚綾のもの。白生地の地紋にも見られる。糸づかいは綸子とほぼ同様だが、紗綾の方が薄い。

貲(布) (さよみ)
奈良時代の布の1種で、麻を原料とした平織物。植物繊維製品としては最も上質とされている。糸は細く、太さも整い、薄くて軽い。肌触りも良い。さよみぬのともいう。

酸性染料( さんせいせんりょう)
動物性繊維である絹や羊毛を染めるのに多く用いる染料。染料の構造上、酸性の性質を含むところから、こう呼ばれている。

地色 (じいろ)
模様や柄以外の部分の色。しごき染・引染などで染められた色。キモノの地となる色。

扱染 (しごきぞめ)
引染・浸染などに対する語。友禅染などの時、文様の型糊を置いた後、地色を染めるために、色糊を扱きベラで布面全体に塗る。その後、挽粉をふり、乾燥させてから蒸熱する。

下染 (したぞめ)
2色以上の染料を重ねて染める時、先に染めることをいい、上掛〈ウワガ〉けに対する語。引き染で、濃い色を染める時、1度にその濃度で染色せずに、ある濃度で1度引染する。その後、目的の濃度に上げて引染する。その時の先に染めることをいう。

地の目( じのめ)
反物の経〈タテ〉・緯〈ヨコ〉の糸の目のこと。

しぼ
織物の糸の撚り方の具合で、表面に表れたしわのような凸凹。

絞り (しぼり)
染色技法の1つ。生地全面を均一に染めるのではなく、部分的に染めのこしを作る技法。染め残す部分をつまみ、糸でくくったり、針で縫ったり、強く圧迫したりして、染料液の中に浸して染める。染め上がってから、糸をほどくと、その部分が模様として表れる。

しみ抜き( しみぬき)
洗濯では落ちにくい汚れをベンジンや稀アンモニア等の薬品を使って除去すること。

地紋起こし( じもんおこし)
生地に織り込まれた模様を生かした染色加工の総称。彩色や刺繍、箔などを、地紋に施こし、立体感のある柄に表現する。着尺、コート、羽織などに見られる。

紗 (しゃ)
盛夏用の透ける生地で、キモノやコート地の染下生地になる。空間(すき間)の多い組織をもつため通気性がよく、光線の当たり加減で美しい埜目〈モクメ〉が表れる。柄を織り出した紗を紋紗という。

十二単( じゅうにひとえ)
女房装束、唐衣裳装束で、女子の正装の俗称。袿〈ウチキ〉(=内着)を十数枚重ねたため、鎌倉時代頃に生まれた名称。

襦袢( じゅばん)
和服用の肌着。元来は丈の短い半襦袢のことを指す。のちに絹製の長襦袢ができた。肌襦袢は四季を通じて着れる単〈ヒトエ〉物。長襦袢は着物との間に着るもので、半襦袢と共に、単仕立てと袷〈アワセ〉仕立ての物がある。

棕櫚 (しゅろ)
ヤシ科の常緑高木。樹皮は強靭〈キョウジン〉で水や湿気に強いことから、縄・刷毛・帯・敷物などに用いられている。

上布 (じょうふ)
上等な布の意。上質な麻糸を平織にし、薄手で軽い。明治以降は、原糸の品種にかかわらず、上布に似た薄手で、ややかたい風合の夏物着尺地を広く上布と称している。上質な絹を上布と呼ぶこともある。

褥( じょく)
中国でいうしとね(すわったり寝たりする時、下に敷く物)。敷物、ふとんなどを指す。

白無垢( しろむく)
汚れのない白衣という意。古代には、麻織物を灰汁などでよく晒〈サラ〉し、神祭りの浄衣に用いた。=祭服。現在では、婚礼の式の時の衣裳を指す。

芯木 (しんぎ)
反物を巻く時、芯に用いる棒。

素描き( すがき)

無線友禅ともいう。染料液を含ませた筆や刷毛で生地に直接、絵画のように自由に多彩な色で描き染めた友禅。挿友禅(本友禅)のように糸目がないのでこの名がある。

菅繍 (すがぬい)
刺繍技法の1つ。布地の緯の目に沿って糸を渡し、これを細糸で留める技法。

裾 (すそ)
衣服の下の縁で、着装すると、ひざや足首に接する部分。また、衣服自体の裾と、着装姿の裾とがある。

素繍(すぬい)
地色を引染またh、浸染で無地染やぼかし染にしたものに、刺繍で模様を表現したものをいう。

墨描き( すみがき)
本来は日本画の技法の1つで、墨一色で描いたものを指す。辻が花染など、墨の描線を効果的に用いたものがある。古くから小袖染色の技法に用いられている。

摺絵 (すりえ)
型染の1つで、型を用いて模様を布に染め付ける技法。木製の凸型を用い、染料や顔料を布地に摺り描いたもの。

摺りはがし( すりはがし)
金彩技法の1つ。模様などの上に箔を貼り、刷毛などですり、適度にはがして、下の模様などを透かせて見せる技法。

摺れ (すれ)
繊維故障の1例。摩擦によって生ずる。布表面の光沢が部分的に異なる現象。

精練 (せいれん)
繊維に含まれている不純物を取り除く処理のことで、単に練るともいう。生糸で織られた生地を石けんにアルカリを加えた浴中で煮沸し、セリシンを落とす。しなやかな白生地にすると同時に、染色効果を高めるために精練をする。

堰出し (せきだし)
防染方法の1つ。模様のまわりを幅広く防染し、染上がりの時、輪郭線は消えて無線となる。蝋〈ロウ〉堰出し、糊堰出し等がある。

セゼッション
1897年ウィーンに起こった建築・美術工芸上の様式。形態や色彩の単純化、明確化を主張した様式。

染色補正 (せんしょくほせい)
単に補正、地直しともいう。染色加工中に発生した汚れや、余分に付着した色素などの故障を衣裳から取り除くこと。または、その方法。洗い張り・生洗いは、衣裳全体が汚れている場合に行う方法。

全通 (ぜんつう)
帯の通し柄をいい、帯のたれ端からたれ端まで、全体に柄が付けられている。

草稿 (そうこう)

紙に描いた草案、図柄などをいう。

袖 (そで)
キモノの腕をおおう箇所をいう。キモノを着た時、胸側になる袖を内袖、背中側になる袖を外袖という。

染小紋( そめこもん)
小紋はもともと型染であるが、織物の小紋が製作されるようになったので、それと区別するために生まれた言葉。

太鼓 (たいこ)

帯を締めた時、背の方来る部分で、太鼓の胴のように丸く結んだ所をいう。

たき染( たきぞめ)
つけ染・浸染〈シンセン〉とも呼ぶ。染料液を入れた容器に、布や糸を浸して染める方法。絞り染めや無地染に用いられる。

抱幅 (だきはば)
和服の部分名称の1つ。前身頃の胸位置での幅を指す。女物の場合、身八つ口から剣先の位置までを指す。抱幅=胸幅(左脇下から右脇下まで)× または、抱幅=胸囲× +3〜4センチで、求める寸法が割り出される。

裁切寸法( たちきりすんぽう)
生地を裁つ場合に必要な寸法。仕上がり寸法+縫代分+縫込分+ゆるみ分=裁切寸法。

ダック防染 (だっくぼうせん)
ダックとは、フッソ系の防染剤のことで、フッソ樹脂の発水性を利用して防染剤に用いることをいう。ダック利用により、伏糊せずに、直接引染ができるため、昭和50年頃から使用されている。着色防染として主に、スクリーン捺染や一部の型・手描友禅に使用されている。

経糸・緯糸 (たていと・ぬきいと)
織物を構成する糸の方向。経糸=縦糸、緯糸=横糸。

立衿 (たてえり)
被布・コート・長襦袢等の前身頃に続く縦に長い布のことで、被布やコートは一幅使い、長襦袢は半幅使いが一般的。

伊達衿( だてえり)
長着の衿に、下衿を重ねて、衿元だけ重着〈カサネギ〉しているように見せるもの。近年では、重厚さや華やかさを添える小物として用いられている。訪問着・色無地・小紋などの晴れ着に用いる。

畳紙 (たとうし)
和服などを包むために和紙などで作られた包装紙のこと。畳んだ衣服を、たんすや衣裳箱に仕舞う場合、これに包んだ後に収納する。

ダンマル( だんまる)
ダンマルとは、マレー語で樹脂・ヤニなどを意味するダマールが日本語化したもので、石油系洗剤で溶ける。ダンマル液は、ダンマルを揮発油で溶いたもので、染色に用いると、ローケツ染に似た効果が得られるので、一般的に、ローケツ染と同様に考えられている。(液描き)

反物 (たんもの)
和服地の総称。一反は、並幅36センチ、長さ11〜16メートルの生地を指す。三丈物は、約12メートル、四丈物は約16メートル。

中柄 (ちゅうがら)

大柄と小柄の間。中間の柄のことで、模様の形態の1つ。柄の大きさは、主観的要素により、多少は異なるが、着用の年齢により、区別することが多い。一般に大柄は若向き、小柄は年配向き、中柄はその間の層向きとすることが多い。

鳥獣戯画 (ちょうじゅうぎが)
鳥(とり)と獣(けもの)の戯(たわむれ)を描いた絵のこと。京都高山寺に伝わる戯画絵巻4巻がある。

直接染料 (ちょくせつせんりょう)
化学染料の1種。絹や木綿等の生地を、薬剤を用いずに直接染めることのできる染料。

褄 (つま)
長着の衽の衿付止りから裾までの間をいう。立褄・褄下・衿下ともいう。褄先とは、立褄と裾の出会う、角〈スミ〉をいう。

紬 (つむぎ)
真綿を手でつむいだ糸を経、緯糸に用い、手機〈テバタ〉で、絣〈カスリ〉、縞、などに織り上げた織物のことをいう。

手のし (てのし)
手作業でゆのしをすること。機械ゆのしにかからない、規格外の生地をゆのしする時や、絞り染・刺繍などの加工特性が、機械ゆのしによって損なわれる場合などに行う。また、仕立て上がったキモノにゆのしをする場合に行う。

伝産法 (でんさんほう)
「伝統的工芸品産業と復興に関する法律」の略称。昭和49年に制定され、17の条文から成る。京都では、西陣織、京くみひも、京友禅、京小紋、京鹿の子紋、京黒紋付染、京繍がこれに当たる。
〔制定の目的〕伝統的工芸品が国民生活に豊かさと潤いを与える上で不可欠のものとみなし、作業環境や後継者問題、原材料確保などの基盤を確立し、産業としての振興をはかること。
〔指定の用件〕イ.主として日常生活の用に供される工芸品であること。ロ.製造過程の主要部分が手工業的であること。ハ.伝統的技術または技法で製造されるもの。(100年程の歴史のあること)ニ.伝統的に使用されてきた原材料によるものであること。ホ.一定地域で生産形成されているもの。これらの指定は、伝統的工芸品産業審議会で審議され、通産大臣が行う。指定された工芸品には、検査の後「伝産証紙」を張付することができる。

天然染料 (てんねんせんりょう)
動・植物や鉱物から得られる染料で、繊維の着色剤などに用いる。


胴裏 (どううら)

キモノの袷〈アワセ〉で、裾回しを除いた部分につける布。紅絹〈コウショク〉・羽二重・モスリン・人絹〈ジンケン〉などを用いる。

胴服 (どうふく)
衣服の上にはおって着る腰までの短い上着。胴衣とも書く。動服から変形し、羽織の原形でもある。室町時代末期から江戸時代初期にかけて武将が用いていた。

綴糸 (とじいと)
刺繍糸をとじつける糸。

泥染 (どろぞめ)
主に、大島紬の褐色を染める方法を指す。鹿児島・沖縄地方の海浜に自生する車輪梅〈シャリンバイ〉という植物の幹被には、褐色色素とタンニンが含まれている。これを染色液に用いて、絹を染めると赤茶色に染まる。大島紬の褐黒色は、この煎汁で煮染した後、鉄分を多く含む泥(泥土液)に浸して得る。

ドロンワーク
布地の経糸、または緯糸を抜いてレース風にかがる手法。

長着 (ながぎ)

キモノと見なした場合は、広く和服全般をさすが、仕立て業者の間では、長着を長物、羽織やコートなどの丈の短いものを半物と呼び区別している。

名古屋帯 (なごやおび)
結びの部分を普通幅にし、残りを半幅に仕立てた帯。

梨地織 (なしじおり)
格子に似た織り方で、布面に梨の果実の表皮に似た外観を表わしたもの。

棗椰子 (なつめやし)
ヤシ科の常緑高木で、インド西部・メソポタミア地方の原産。

ぐり (なんぐり)
染難、織難が発生していないか検品すること。加工の各段階で反物を巻きながら、難点を見つけるだけでなく、それらの原因になる要素はないかもチェックする。早期発見により、的確な処理で、未然に防ぐことができる。

膠 (にかわ)

動物の皮・骨・腱などを水で煮て得た液をさらに煮つめ、干し固めたものがゼラチン。水で煮ると溶け、粘着性のある液になり、冷えると凝固する。この性質を利用し、顔料などを生地に固着させるのに使用する。

錦 (にしき)
色糸を用い、文様を織り出した絹紋織物の総称。綾錦ともいい、織物の中で、豪華で美麗なものを指す。中国の秦時代に創始されたという。日本では、正倉院・法隆寺などの遺品に見られる。古くは京都で生産され、江戸時代中期以降、加賀(石川県)・越前(福井県)・丹後(京都府北部)・郡内(山梨県)・仙台(宮城県)などでも生産されている。

縫込み (ぬいこみ)

衣服の縫製に際して布の余りを裁切らず、縫込んでおくこと。又、縫い込んだ部分。仕立直しの時に利用できるので便利。衿先や衿付けの縫込みは、衿を整える芯の働きも兼ねる和服独特の処理をする。

縫締め (ぬいじめ)
紋染の1つ。文様の部分を縫った糸を引き締めて染める方法。文様の輪郭だけを縫い絞るものや、一定の区画を縫い締めて袋状にし、その部分にも糸を巻いて絞るもの、布を二つ折りにし、浅くつまみ縫いにして絞るものなど多数ある。

縫代 (ぬいしろ)
縫い目より外側の、外から見えない不要な部分。洋裁と異なり、切り落とさないので、解いて端ぬいすれば、もとの一反にもどるという利点がある。

縫取り (ぬいとり)
一般的には、縫取りふうの織方を指し、部分的に絵・柄を織り込んだりする。また、刺繍によって文字や文様を繍う、刺繍技法をも指す。

濡描き (ぬれがき)
無線友禅の一種で、ぼかしの感じを強調して表現したもの。生地を濡らし、筆や刷毛で模様を手描染するので、滲みが生じる。色調が柔らかく、独特の味わいを生み出す。

濡蒸し (ぬれむし)
蒸しの方法の1つ。生地を乾燥させずに蒸すので、水分が多い状態で蒸し工程が行われるため、染料の拡散移行が容易となり、有効な発色効果が得られる。扱染〈シゴキゾメ〉など、多量の糊を使うものに向く蒸し方法。

撚糸 (ねんし)
1本または2本以上の糸にヨリをかける操作で、ヨリ糸ともいう。撚は糸の強度・伸長性・かたさ・太さ・光沢・丸さなどを決める主要因の1つ。


野毛 (のげ)

金銀箔を細長く切った切箔の1種。

糊糸目( のりいとめ)
糸目糊置の材料の1つ。もち米粉・ヌカ・石灰・蘇芳〈スオウ〉を混ぜて作った糊で、水ですべて流れ落ちる。


媒染 (ばいせん)
染色の際、繊維に染料が染着しない場合に、媒介することを媒染といい、媒介する薬剤を媒染剤という。天然染料で染める場合などによく用いられる。媒染剤を用いて繊維に染着させる方法を媒染染法と呼ぶ。

箔 (はく)
金属の持つ展延性〈テンエンセイ〉を利用して、薄い膜状になるまでたたいて延ばしたものを箔という。特に、金や銀は展延性にすぐれ、貴金属という高級感からも好まれ、古くから、箔の材料として用いられている。

箔くくり( はくくくり)
金彩加工の1つ。模様の輪郭などを金銀箔線で描いていく技法をいう。

刷毛 (はけ)
染色用具の1種で、染刷毛とも呼び、鹿毛、馬毛等で作られている。形状は、丸刷毛・平刷毛・小刷毛に分類される。丸刷毛=毛先が円形で、鹿毛を4手に括くることから四手刷毛〈ヨツデバケ〉ともいい、大小で大丸〈ダイマル〉・中丸〈チュウマル〉・小丸〈コマル〉と呼ぶ。引染、摺込用などに使用。平刷毛=毛先を手にして2枚の板ではさんだもので、敷糊や地入れ、引染などに適する。小刷毛=竹柄の先端に毛をはさんだもので、主に挿友禅用に用いる。その他に片端刷毛などもある。

羽尺 (はじゃく)
羽織用に織られた丈の短い生地の総称。

八掛 (はっかけ)
女性用の袷長着や綿入れなど、裾裏につける布。裾回しともいう。総丈を身頃4つ、衽2つ、衿先2つ、合計8つに裁ったことでこの名がある。

腹 (はら)
帯を締めた時、胴回りの前の部分のこと。太鼓に対する語。


引切 (ひききり)
引染技法の1つ。1色で引染したものをいう。

疋物 (ひきもの)
一般には小巾織物の二反分あるものをいう。

疋田 (ひった)
絞り技法では、鹿子と呼び、型紙を用いて、染料を刷毛で摺り込む摺疋田〈スリビッタ〉と、型疋田、筆を用いた手描きによる描疋田がある。また、糊防染を利用して染める糊疋田もある。

単(衣) ひとえ
単仕立ての長着のこと。夏物として、初夏から初秋まで着用する。

一越 (ひとこし)
織物では、経糸を1本、2本と数え、緯糸は一越、二越と数える。転じて緯糸に左撚〈ヨ〉り、右撚りの強撚糸を交互に用いた絹織物(縮緬〈チリメン〉)を指す。=一越ちりめん。

一つ身 (ひとつみ)
本裁ち(大人物)・中裁ち(四つ身)に対し、三つ身と共に小裁ちと称する。嬰児〈エイジ〉から2歳くらいまでの子供用の長着。後身頃を生地幅いっぱいにとるのでこの名がある。

一目鹿子( ひとめかのこ)
絞り技法の1つ。下絵に描かれた粒と粒との間隔を詰めて、細かく絞っていく技法で、小粒にくくるところに特徴がある。

雛形 (ひながた)
キモノを創る前に、実物を想定して図案に描く。下絵を描く前に描く製図。キモノの平面図に木炭などで描いたもの。

比翼 (ひよく)
比翼仕立てされた長着の下着にあたる部分。同形の布が2枚重なっているように見えるので、この名がある。本比翼と付比翼があり、本比翼は表着の裏地の縫代に比翼の縫代を一緒に縫い込んで仕立てたものを指し、付け比翼は取りはずしができる。現在の留袖は、付比翼のものが多い。

比翼仕立て (ひよくじたて)
2枚重ね(襲〈カサネ〉)を着たように見せる和服の仕立て方。衿・立褄・裾・袖口・振りの部分の下着を表着に縫い付け、重ね着のように見せる仕立て方。

平繍 (ひらぬい)
刺繍技法の1つ。広い面を縦・横・斜めに糸が重ならないよう平らに、隙間なく刺しうめる方法。主に平糸を用い、花・鳥など、多くの模様に用いられる。

紅型 (びんがた)
沖縄で生まれた独特な染め味を持つ型紙染で、強烈・多彩・華麗な点が特徴とされている。友禅染・江戸小紋と並ぶ日本の代表的な染色。現在では静岡・東京・京都などでも生産されている。


ふき
袷や綿入れなどの仕立て方で、袖口や裾の縁が、表布より裏布を少しはみ出させている部分。紋服以外は、袖口 2ミリ、裾 4ミリが標準。現在に残る特殊な例として、文楽人形の衣裳・歌舞伎衣裳・花嫁衣裳(打掛など)がある。

袱紗 (ふくさ)
進物の上にかけたり、包んだりするもので、大きさ・地質・文様は用途により異なる。現在袱紗と呼ばれているものは、祝儀・不祝儀用の祝儀袋を包むのに主に用いられている。風呂敷の小形のものを指す。紅・紫のちりめんや羽二重を単仕立てにしたものや、表と裏の生地を変えて袷仕立てにしたものなどがある。

袋帯 (ふくろおび)
略礼装に用いる女物の帯のことで、帯丈4メートル、幅約30センチの織り帯。近年、留袖などの礼装にも丸帯の代わりに用いられる。

布海苔 (ふのり)
海草類の1つ。乾燥させた後、煮て糊とする。マフノリが最高品質とされる。糊料として、引染や友禅の色挿しなどにもちいる。

文箱 (ふばこ)
書状などを入れる細長い箱。

振り (ふり)
袖付から袖下までの、あいた部分の名称。

振り違い( ふりちがい)
キモノを着た時に、左の内袖(前袖)、右の外袖(後袖)を指していう。

文庫 (ぶんこ)
キモノ・反物・袱紗などを包む紙。キモノを包むものは特に、小袖文庫と呼ぶ。


紅下 (べにした)

絹布を黒染する際、紅色で下染することをいう。こうすることで、黒色の深みを増す効果が得られる。また、藍で下染することを藍下〈アイシタ〉といい青みを含んだ上品な黒に染まる。


帽子絞り (ぼうししぼり)
絞染め技法の1つ。絞りの大きさにより、大帽子・中帽子・小帽子がある。他にも太鼓帽子・逆帽子などがある。模様の輪郭線に糸入れし、その糸を引き締める時に芯を包み、芯の周囲に糸入れ線を当てて引き締める。防染部分に、紙とビニールをかぶせて括ると、帽子をかぶせたように見えるのでこの名がついた。

暈し染 (ぼかしぞめ)
濃さを変えたり、色を変えたりしながら、ぼかしに染め上げる技法で、キモノの地染に使われる。一色濃淡のぼかしを共ぼかし、または、濃淡ぼかしと呼び、多色づかいのぼかし染は曙〈アケボノ〉ぼかし、それを段状に変化させたものを段ぼかしという。

補色 (ほしょく)
ある2色を混色することで、灰色や黒になる場合、その2色は互いの補色である。赤と青緑など。


前身頃 (まえみごろ)

キモノの身体の胴の部分をおおうところを身頃といい、前の部分を前身頃、背の方を後身頃という。前を重ねて着用する長着・襦袢・コートにおいて、上に重ねる前身頃を上前身頃、下になる方を下前身頃という。

蒔絵 (まきえ)
漆〈ウルシ〉を塗った上に、金・銀粉、色粉などを蒔きつけて、器物の面に絵模様を表わす、日本独自の漆工〈シツコウ〉美術。奈良時代から始まる。

襠 (まち)
衣服や鞄などにつけられる主に三角形の部分をいう。まちのあるキモノには、羽織・袴〈ハカマ〉などがある。キモノの場合は、必ず三角形の布とは限らず、女物の羽織や被布〈ヒフ〉は上辺1.5センチ、底辺6〜6.5センチの台形になり、男物の羽織では、底辺が7〜7.5センチの三角形。

纏繍( まつりぬい)
刺繍技法の1つ。一の字型の針足を少しずつ重ねながら、一本の線に見えるように繍う技法をいう。

丸帯 (まるおび)
表裏を2枚の裂を縫い合わせた昼夜帯に対し、1枚の裂を2つ折りにして仕立てた帯で、正式な礼装の時に用いた。現在の丸帯は、織幅約65〜75センチ(鯨尺で1尺7寸〜2尺)の帯地を2つ折りにして仕立てている。しかし、丸帯は、重い上に締めにくいので、最近では、袋帯で代用することが多くなっている。


身丈 (みたけ)
長着の肩山から裾までの長さ。女物の長着は、着丈に20センチほど加えた丈を身丈とし、男物は着丈と同寸。

道長取り (みちながどり)
藤原道長が好んだという継ぎ紙された料紙の模様。和紙を指でちぎったような表現で、ゆるやかな流れを持ち、かつ変化に富む線で囲んだ模様をいう。

三つ身 (みつみ)
キモノの裁ち方の1つで2歳くらいの幼児用の長着。背縫いがあるので、格好は良いが、身幅は一つ身と同寸のため、あまり長い間は着れない。現在ではあまり着用されていない。

身幅 (みはば)
キモノの身頃の前幅と後幅。

耳 (みみ)
織物の端。地と異なる糸、または組織密度を用いて、織物の両側に織りつけた部分。織物の地を保護するのが目的。

身八つ口 (みやつぐち)
女物・子供物の和服の身頃の明きのこと。脇の明きを八つ口、袖の明きを振りという。振りのことを袖八つ口ということもある。


無双 (むそう)

キモノの仕立て方の1つ。表・裏地とも同じ生地を使って仕立てた袷。無双羽織・無双袖などがある。

目引 (めひき)

下染や先染に対し、目的の色を得るために、一旦染揚げした後に色掛けすることをいう。

揉箔 (もみはく)
金彩加工の技法の1つ。ローケツ染の亀裂のような表現を金彩で行う方法。

モヤ暈し (もやぼかし)
引染技法の1つ。生地全体にもやがかかったようにぼかす加工方法。

盛り金 (もりきん)
金彩加工の技法の1つ。刺繍のように盛り上がり、立体感を表わす。

紋洗い (もんあらい)
紋を付ける部分を洗い、糊・汚れなどを洗浄する技法。

紋紗 (もんしゃ)
文様を織り出した紗。地紋のある紗地。盛夏用に用いる生地。

紋糊 (もんのり)
家紋などの紋章を付ける時に用いる防染糊。または、防染を行うことをいう。

焼箔 (やきはく)

銀箔を硫黄〈イオウ〉などを用いて化学変化を起こさせ、中金色・青貝・赤貝・黒箔などの種類にしたもの。

裄 (ゆき)

首の後ろのつけ根の骨のところから、肩先を経て手首までの長さのこと。キモノの裄寸は、着用者の裄寸法と同寸に作のが一般的。

湯通し (ゆどうし)
織物仕上工程の1つ。織物を温湯に漬けて、製織のために付着した糊を除去すること。また、湯通しすることで、光沢と柔らかな味が出る。


洋花 (ようばな)
一般的に、カトレア・バラ・チューリップなどを洋花という。それに対し、菊・梅・牡丹などを和花という。

四つ身 (よつみ)
キモノの裁ち方の1つ。大人物の本裁ちに対し、中裁ちに含まれる。5〜12歳くらいの子供用の長着。身丈の4倍で身頃を裁つことからの呼び名。


羅 (ら)
網目状の透けた薄い織物。経糸が複雑に絡み合って、編物に似た外観をしている。中国漢の時代に多数織られ、正倉院蔵の古代裂にも見られる。細かい網目状の織り方と粗い籠目状の織り方を併用し、文様を表わしたものを紋羅という。

落款 (らっかん)
手描きのキモノや帯に押してある印で、作者を示すもの。キモノは下前、帯はたれのところに押すことが多い。

螺鈿 (らでん)
おうむ貝や蝶貝など、真珠光を放つ部分を薄片にして、種々の形に切って装飾に用いる。

霊獣 (れいじゅう)
尊く不思議な、実在しないけもの。麒麟・龍・鳳凰など。

連珠文 (れんじゅもん)
珠を連続させた文様。ササン朝ペルシャで創始され、中国を経て日本に伝わる。円文の縁の円帯部に連珠文をめぐらしたものを連珠円文という。法隆寺蔵・正倉院蔵に残る織物類に多数見られる。

絽 (ろ)
紗織と平織とを組み合わせた組織を持つ絡〈カラミ〉織物。平絽〈ヒラロ〉・綾絽〈アヤロ〉などがあり、夏のキモノ地に用いる。

ローケツ染 (ろうけつぞめ)
ロウを加熱し溶かしたものを、筆や刷毛を用いて布に模様を描く。また、布面に伏糊のようにロウを固着させて、染料液の浸入を防いで、模様染をする方法などがある。この方法を用いて、色を重ねていけば、味わい深い独特の色調が表現される。ロウの種類には、パラフィン・ミツロウ・木ロウなどがある。ローケツ染の発祥地はインドといわれ、ペルシャ・エジプト・南方の島国・中国などのさまざまな国を経て日本に伝わり、歴史は古く、ジャワ更紗はその代表的なものとなる。日本では、天平の三纈の中の1つ、 纈の名で呼ばれ、正倉院蔵に残されている。

ログウッド
植物染料の1つ。マメ科の常緑高木でメキシコが原生国。樹木の幹から浸出〈シンシュツ〉するヘマトキシリンを主成分に形成している。黒色を染める時に、媒染剤を用いて、使用される。

六通 (ろくつう)
帯全体の6割ほどが、柄つけされている帯のことをいい、六尺通しともいう。

枠場 (わくば)
生地の両端をつなぎ合わせて、ベルト状に生地を張り、作業を連続的に行うのに用いる道具。